ある日、マンションの郵便受けを見ると裁判所から分厚い封書が・・・
「ん?裁判所に呼ばれる覚えはないぞ」と思いながら少し焦って届いた封書を開けるとそこには・・・
裁判員とは
裁判員裁判とは、抽選で選ばれた学生や既定の職業を除く日本有権者が「裁判員」となって、裁判官と一緒に刑事被告人が有罪であるか否か、どれくらいの刑を課すべきかを決める制度です。
裁判員に選ばれるまでの流れや内容
毎年秋ごろに20歳以上の有権者から裁判所ごとにくじで裁判員の候補が選出されます。
裁判員の名簿記載通知・調査票が家に届く
くじで選ばれた有権者は「裁判員候補」として、毎年11月ごろに各裁判所から通知が届けられます。
記載されている書面には「あなたが裁判員裁判で法廷に立つ裁判員の名簿に記載されていますよー」というお知らせと、もし選ばれた場合、出頭が可能か、不可能な場合はその理由を記入し、返信する「調査票」が入っています。
「えーーーーーーーっ」とビックリするとは思いますが、まだです。あなたが名簿に載っているだけで、まだ裁判員として呼ばれているわけではありません。
「選ばれた場合、どうする?」という調査です。とはいえ、名簿に載っているという事は、翌年から1年間、その名簿から裁判員の候補を選ぶ為、可能性はゼロではないということです。
裁判員になれない人はどんな人?
とは言え、名簿に記載されていても以下に該当する方は裁判員になることができません。
該当する方はその旨を調査票に記載して返信すれば、その時点で裁判員には選ばれないことになります。
有権者のデータから「くじ」で裁判員候補名簿に記載する人を決めるため、職業や状況までは把握できていません。
該当者であっても名簿に載ってしまうため、この調査で該当者を名簿から削除する作業です。
欠格事由のある人=一般的に裁判員になることができない人
・ 国家公務員法38条の規定に該当する人(国家公務員になる資格のない人)
・ 義務教育を終了していない人(義務教育を終了した人と同等以上の学識を有する人は除く)
・ 禁錮以上の刑に処せられた人
・ 心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障のある人
就職禁止事由のある人=裁判員の職務に就くことができない人
・ 国会議員、国務大臣、国の行政機関の幹部職員
・ 司法関係者(裁判官、検察官、弁護士など)
・ 大学の法律学の教授、准教授
・ 都道府県知事及び市町村長(特別区長を含む)
・ 自衛官
・ 禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない人
・ 逮捕又は勾留されている人
事件に関連する不適格事由のある人=その事件について裁判員になることができない人
・ 審理する事件の被告人又は被害者本人、その親族、同居人など
・ 審理する事件について、証人又は鑑定人になった人、被告人の代理人、弁護人等、
検察官又は司法警察職員として職務を行った人など
その他の不適格事由のある人
その他、裁判所が不公平な裁判をするおそれがあると認めた人
これらの条件に当てはまらない場合は、この先一年間は裁判員の名簿に載ることが確定します。
また、
● 客観的な辞退事由に該当する場合,1年を通じての辞退希望の有無・理由。
(例:70歳以上,学生または生徒,過去5年以内における裁判員経験者など)
● 重い疾病または傷害があるため裁判員としての参加が困難な場合,1年を通じての辞退希望の有無・理由。
● 月の大半にわたって裁判員となることが特に困難な特定の月がある場合,その特定の月における辞退希望の有無・理由。※注(例:株主総会の開催月など)
※注 調査票の記載から,特定の月の大半にわたって,裁判員になることができない事情(辞退事由)があると認められた場合,当該特定の月に行われる事件については,裁判員候補者として裁判所に呼ばれることはありません。
裁判の6週間前までに裁判員候補の呼び出し状と質問票が家に届く
調査後、事件ごとに作成された名簿から裁判員候補を選んでいきます。
ここで選ばれた方は「あくまでも裁判員の候補」として裁判の6週間前までに呼び出し状と質問票が家に届きます。
送られてくるのはこんな感じの書類です。
一回目の書類の質問票とこのなり、今回の質問票では、承諾または辞退についての質問票です。
辞退する場合は、辞退理由を添えて、返信用の封筒に入れて送り返します。
※この段階でもあなたはまだ裁判員に選ばれていません。
裁判員選定の手続き(抽選会)
その後、「〇月〇日、〇時に◇◇裁判所の△階、・・室に集合してください」という書類が届きます。
簡単に言うと「裁判員の抽選会」です。
名簿から裁判毎に選ばれるので、中には時間差で他の裁判からも呼び出し状が届くというミラクルも起こります。
つまり、一度前回の裁判を辞退してもその年であればまた名簿からくじで選ぶため、1年間は何回も選ばれる可能性もあるという事です。
1度裁判員に選ばれたら、5年間は辞退しても良いというルールがありますので、何回も参加しなければいけないわけではありません。
裁判員選任手続きの流れ
裁判員の選定日には以下のことなどが朝から2時間程度あります。
・裁判員制度の解説
・呼ばれた裁判を担当する裁判長のあいさつ
・アンケート
・旅費請求書(選任日にあたり、かかった旅費や宿泊費、日当を振り込むため)
・抽選会(パソコンによるランダムなくじ)
など
裁判員の抽選で選ばれる確率
裁判の規模や裁判所の規模にもよると思いますが呼び出し状が届いた方の中から裁判員6名、補充裁判員数名が抽選で選ばれます。
1つの裁判の裁判員の数・・・6名
補充裁判員・・・2~4名
規模に応じて補充裁判員の数は変動します。
ちなみに私の場合、呼ばれたのは38名、そのうち数名は何らかの理由で省かれましたが、この中から裁判員6名、補充裁判員2名が選出されました。(呼び出されるのは裁判の規模によります。50人前後、多いところれでは100人くらい呼ばれるようです。)
ざっとした確率で6/38人 約15.8%です。ちなみに裁判員候補に選ばれる確率は全国平均で1/302人 0.33%
平均で計算すると 1/302×6/38=5.2%ということになります。
抽選で裁判員に選ばれなかった人
抽選により選ばれなかった人は、今回の裁判には出なくて良いということです。(他の裁判に選ばれる可能性はゼロではありません)
裁判員選定に呼ばれた人の報酬(日当)
裁判員に選ばれた人、選ばれなかった人の両方に、裁判所から報酬(日当)が振り込まれます。
もちろん、呼び出されていたのに辞退した人や無視した人には貰える権利はありません。
日当は5000円程+交通費(実費ではなく裁判員の参加する刑事裁判に関する規則6条に定められている通り、
距離に応じて1km当たり37円で計算した金額)が支払われます。
報酬の振込日
裁判員の選定日(抽選日)から1週間後から10日前後です。調査票に記載した振込口座に振り込まれます。
裁判員裁判の日程や日数
裁判員裁判の日程および日数は裁判によって異なります。短い裁判員裁判でも3日から5日、長いもので10数日かかるものもあります。
短いものであれば参加しやすいですが、長い裁判員裁判は社会人である私たちには難しい場合もありますね。
会社に報告し、可能であればぜひ参加しましょう。
裁判員の服装
裁判だからスーツの着用とばかり思っていましたが、実際は私服で構いません。
常識範囲内の普段着で法廷に立ちます。これは僕も驚きましたが・・・。
よほどぶっ飛んだ格好でなければ、大丈夫です。
補充裁判員とは?
裁判員6人のほかに補充裁判員が数名選ばれます。補充裁判員とは文字の通り、裁判員が何らかの理由で裁判員裁判に出れない場合に代わりに出る裁判員を指します。
基本、裁判員と同じように、法廷に立ちますが、裁判員と違って、被告人や承認に質問ができず、質問がある場合は裁判官が代わりに質問します。
裁判員と補充裁判員の報酬
もちろん、裁判員や補充裁判員の中には働いている方が多く、仕事を休んで参加していますので、きちんと報酬が支払われます。
報酬額は1日あたり最高額で1万円程+交通費(当日の食事は自腹、飲み物などは支給されます)×裁判員裁判の日数です。裁判員裁判の日程がすべて終了後、7から10日後にして口座に振り込まれます。
私の場合、判決日含む計5日の日程で、5万円程でした(交通費含む)
第七条 裁判員等の日当は、出頭又は職務及びそれらのための旅行(以下「出頭等」とい
う )に必要な日数に応じて支給する。
2 日当の額は、裁判員及び補充裁判員については一日当たり一万円以内において、裁判
員等選任手続の期日に出頭した選任予定裁判員及び裁判員候補者については一日当たり
八千円以内において、それぞれ裁判所が定める。
報酬と記載していますが、正しくは裁判員としての報酬ではなく、仕事を休んで出頭している為その補填です。
裁判員や補充裁判員に選ばれたのに放棄したらどうなるのか
裁判員の抽選で選ばれたにも関わらず、無断で欠席した場合、法律で10万円以下の過料が課せられますが、なぜか2017年まで適用されたことはありません。
とはいえ無断欠席は社会人としてマナー違反です。辞退する際はきちんと申し出ましょう。
最後に
実際の裁判員裁判の内容に関しては全て伏せますが、参加した感想としては「選ばれて良かった」と思いました。
正直最初はびっくりしましたが、裁判官、裁判員の評議における物事の考え方や捉え方、犯罪の罪の重さなど通常の人は経験したくてもできないドラマや映画かと思うような貴重な体験(犯罪の重さや裁判の流れ、検察官や弁護士のバトル、裁判長や裁判官の重みのある言葉など)ができます。
裁判員候補や裁判員に選ばれた方は、よほどスケジュールが合わなかったり、やむを得ない理由がなければ積極的に参加しましょう。